ゼミの説明

キーワード:内戦・地域紛争・戦争、平和政策(安全保障、外交、国際的介入、和平仲介)、テロリズム(イスラーム過激派)、旧ソ連地域の研究(ロシア、コーカサス、チェチェン)

ローバル化が進む現代においては、これまで以上に世界の相互依存性が高まっており、それが様々な問題を引き起こしています。政策とは現実に存在する問題を改善するための手段であり、その意味で、あらゆる政策を考える際に、国際関係やグローバル化は無視できないものになっています。つまり、他国の政策との比較や、国際化やグローバル化によって生じている問題への対応など、政策と国際関係、グローバル化は切り離せません。したがって国際関係に関する知識は、政策学を学ぶ上でも必要不可欠なものですし、グローバル化の進む現代においては社会人になっても当然の教養として持っていることを前提とされています。まずは国際関係と政策(国内であれ国際であれ)が関係ないという固定観念を捨ててください。

学力はどうでしょうか?世界の様々な問題を理解し、その政策的な対応を考える際に語学力は強い武器になりますね。語学は、本来コミュニケーション・ツール、手段です。つまり何のために学び、何に用いるのかが重要なのです。政策学の知識があり、グローバル化の進む現代社会にある問題を認知し、それを改善するために駆使できる語学力もある。このような形こそが、本来政策学部生の強みであり、他学部生にはない、あなたの魅力になるはずです。だから、もしあなたが政策学は、国内のことを内向きに学ぶので、英語や第二外国語はいらない、留学もしなくても別にいいと、ステレオタイプな見方をしているとしたら、今日から発想の転換をしてください。可能性が広がりますよ。

[付記]  教員やゼミに関心のある人は、春学期・国際政治学、秋学期・国際平和政策論を受講してください。またゼミへの応募は、原則としてゼミ説明会に参加していることが条件になります。なお近年、「単位にならなくても良いからゼミに参加させてほしい」という申し出がありますが、こうした申し出をする前に指導教員の先生の許可をとってください。またゼミの変更は、2年次秋学期から3年次春学期にしかできませんので注意してください。

ゼミ生によるゼミ紹介インスタ【2023年度版】


2020年度に始まった新しいゼミです。少数精鋭で国際政治の先端的問題を探究します。議論を通して新しい知見を獲得し、日々の成長が感じられます。
<2023年現在>
4年生:4名(1名留学)
3年生:4名(1名留学)
2年生:5名(1名留学生)
但し、単位にならない形でゼミに参加している学生も複数名います。

富樫ゼミの特徴は理論と事例、比較という三つの視座から国際政治を学ぶことです。皆、最初は研究テーマは決まっていませんが、この三つの観点をもって国際関係を学ぶことで、徐々に知的関心が具体化されて行きます。

理論的視座の重要性

国際政治には、戦争や平和に関する様々な理論的蓄積があり、理論や概念を学ぶことで、どこになぜ注目すれば良いのかが分かります。そして「なぜこうなっているのか?」というパズル(研究上の問い)を発見できます。

事例や地域に注目する意義

理論は実際のところ、事例を理解するための「ツール」(道具)です。特定の事例や地域において発生している問題(紛争やテロ、安全保障上の脅威など)について深く分析し、考察することが学びを深める上で不可欠です。

比較や一般化への意識

事例を深く学ぶ過程では、特に事例を突き放して、他の地域でも生じている問題ではないかと比較の観点を持ったり、明らかになったことが他の事例の問題に役立つのではないかと一般化しようとする姿勢も不可欠です。

ゼミで学生の皆さんが学ぶこと、ゼミの内容について簡単に紹介します

国際関係の基礎知識

ゼミでは、国際関係に関する基礎的知識を形成し、国際社会に存在する様々な問題について受講生が多角的に検討できるようになることを目的とします。教員の研究は、紛争研究(平和政策やテロリズムを含む)、旧ソ連研究ですが、本演習ではそれに限定せず、各自が関心を持つ国際関係に関するテーマを研究します。なお2年次は共通テキスト等を輪読したり、グループでの作業を行う場合があります。なおゼミ生のテーマは多様で、国際関係であれば、特に制限はしません。

学術的作法

自らの知的関心を具体化させ、当該分野に関する論文や書籍等を批判的に読み・まとめ・発表し、議論するテクニックを学びます。そのために研究作法(研究テーマの見つけ方、文献の探し方と読み方、発表資料のまとめ方、発表の仕方、その他論文執筆に不可欠な技術的作法)についての冊子を「虎の巻」としてゼミ生に配布し、教員からも説明を行います。論理的思考力、批判的思考力、そしてプレゼン力やデスカッション力も鍛えます。

合同ゼミや合宿・海外フィールドワーク

同志社大学における演習では2022年から月村ゼミと合同で沖縄研修に行き、普天間基地の視察、歴史資料館や博物館、沖縄国際大学の学生と交流しました。2023年度は関西の複数の大学と合同ゼミを行い、プレゼン発表をする予定です。また卒論の中間発表会や最終発表会も行い、上級生と下級生が交流し学ぶ機会も設けています。海外フィールドワークも2023年度は月村ゼミとバルカンに行きます。国内・国外FW先は来年度以降変わる可能性があります。

学生が主体的に学びたいことを学ぶ!

ゼミの主役は教員ではなく学生の皆さんです。皆さんが自由な発想と意見を持ち、自主的・自律的にゼミに取り組み、学びたいことを自分から進んで学んでください。ゼミ合宿やゼミのイベントも学生の提案を歓迎します。以前所属していた大学ではゼミ合宿を1泊2日で行い、ゼミ生の親睦を深めました。教員は学生の研究したいことをサポートします。教員も学生も同じ学び舎にいる学徒という意味では同じです。是非、教員の意見を鵜呑みにするのではなく、果敢に挑戦し、意見を行って下さい。

現場を意識した学際的な研究を目指して

チェチェンにて
チェチェンにて
大使館勤務時(大使館ウェブサイトより。左端)
大使館勤務時(大使館ウェブサイトより。左端)

富樫 耕介(とがし こうすけ) 1984年 東京生まれ
【所属】 政策学部准教授
【学歴】 横浜市立大学 国際文化学部国際関係学科
     東北大学 国際文化研究科博士前期課程
     東京大学 総合文化研究科博士後期課程
【職歴】
  外務省国際情報統括官組織専門分析員(1年)
  在ウズベキスタン日本大使館 専門調査員(2年)
  東海大学 教養学部国際学科講師(3年)
【専門】紛争研究、旧ソ連地域研究(ロシア、チェチェンなど)
 

は大学入試を控える高校3年生の頃、アムネスティ・インターナショナルというNGOの報告会に参加し、1枚の写真を見て衝撃を受けました。それはチェチェン紛争の写真でした。大学に入ってチェチェン紛争を研究すると決めて学び始めましたが、当時は日本語でも本はほとんどありませんでした。それならと、自らジャーナリストやNGOの人に接触し、大学生の間に2度アゼルバイジャンを訪問し、チェチェン難民支援活動を行いました。

の後、大学院に進み研究をしつつ、外務省(本省)の国際情報統括官組織においてCIS担当専門分析員として、また在ウズベキスタン日本大使館専門調査員として勤務しました。そこでは旧ソ連地域の分離主義問題やイスラーム過激派のテロなどについての知見も深めましたが、なにより外交の現場を見たことは面白い経験になりました。

使館勤務では総理大臣訪問ロジ、あるいは独裁者の大統領の死去などがあり、他の人が10年いても経験できなかった様々なできごとを経験しました。授業で時々、そういった「こばなし」をしています。

先生についてもっと知りたい方はこちらをどうぞ

演習を通して私が引き伸ばそうと思っている学生の潜在力や新しい能力は何かというお話します。学生の皆さんからすると、気が付いたら身についている力としても言い換え可能です。

第一に、知的好奇心です。人を突き動かす素朴な力として「疑問」があります。「なぜ、どうしてこうなの?」という関心を抱くから我々は学び成長するのです。知的好奇心はあらゆる行動の原動力であり、問題発見、解決の第一歩でもあります。現状にある問題を認識することは問題解決のスタートだからです。皆さんの知的好奇心と問題発見力をゼミで養います。

第二に、批判的思考力です。世の中には様々な数値やデータ、あるいは多様な解釈や議論がありますが、それは本当に正しいのでしょうか?先生や優等生の主張も間違っているかもしれません。このような批判的な思考は、何がどう問題なのかを考え、それを解決するために考えを巡らせることにも繋がります。そして、単に他者を非難するのではなく建設的な議論へとも繋がります。批判的思考力は、非難のためではなく現状の問題を把握し、改善するための思考力を意味します。

第三に、論理的思考力と知識です。物事の問題点に気がついて、それを改善するための議論を進めるには、自分が無知では何もできません。論理的に考えるためにも知識は必要です。このような自分の関心分野に関する知識を皆さんにはたくさん吸収して欲しいと思っています。知識は学ぶ動機がなければ吸収できませんが、皆さん自身が知的関心を持ち、様々な思考を巡らせているテーマには皆さん自身が学ぶ動機と意欲があるため、知識を得ることは快感になります。

第四に、他者と共感・共有する力です。現在、世界中で社会の分断が進んでいますが、自分の主張がいかに正しいと思っていても、他者を否定し押し付ければ誰も理解などしてくれません。他者に共感しつつ、自分の考えや意見を共有する力が強く求められています。そのためには、主観的に物事を語るのではなく、論理的、客観的に語ることと同時に、相手の立場にたった説明が求められます。こうした力をゼミを通して皆さんは身につけていきます。そして、このような力こそ社会に出ても役立つ力だと考えています。 

同志社大学政策学部の演習は2020年から開始されたため、前の所属先のゼミ生のコメントを記載しています。演習の雰囲気がこれで何となく分かると思います。なお、あくまでも個人の感想・意見です。

富樫ゼミの良いところ

富樫ゼミの大変なところ

  • ・文献の評価をしっかりと行ってくれるので、次に読むべき文献を自分で見つけられるようになる。
  • ・卒業研究に取り組む上で大切な文献を読む力やそれをまとめる力が身につく。
  • ・しっかり取り組める人は、卒論を焦って作成するという心配はない
  • ・計画的にやりたい人はすごくオススメ
  • ・細かく課題に期限があるので、自分の卒論テーマと向き合う機会が多い
  • ・先生が親切に教えていただけるところ
  • 学生と先生の距離が近い
  • ・一人一人に丁寧に強く否定することなく指導していただける
  • ・最初は卒論のテーマを絞るために文献発表があり、文献を探したり読んだりの繰り返しで大変だけど最終的には自分のためになる。
  • ・授業内でゼミのメンバー、先生からアドバイスがもらえるので、卒論を書く上での環境がすごく良い
  • ・自分の興味や関心を明確にしていなければ、文献を探して読むために時間が多くかかる
  • ・文献をただ読むだけではなく、疑問点や論点を自分で考える必要がある。
  • ・発言する機会が多いので頭がいいメンバーの中で発言することが緊張する。また積極性が求められる。
  • ・内容が高度で、やる気がないと置いていかれる
  • ・ゼミのために時間を割くことが多い

  • 文献の内容に関しても高度なものを取り扱うため、あらかじめ予習が必要
  • ・自分の研究テーマを絞るために多くの文献に目を通す必要がある 
  • ・ちゃんとやってこないと、先生がそれにガッカリしてしまうので、やる気がないと大変!
  • ・卒論前の準備が徹底しているため三年生から文献や本をたくさん読むので苦労する

 

同志社大学政策学部に現在所属している富樫ゼミ生の研究テーマについて紹介します【更新中】。3年生についてはまだテーマが確定していないため、抽象的に記載しています。

  • 冷戦終結後のロシア北極圏 ―経済・安全保障環境の変化とその影響― 
  • ポスト冷戦期における「非同盟」のスウェーデンとNATO ―国際平和協力に着目した対外政策変更に関する理論的アプローチ-
  • イスラーム過激派のテロと脅威
  • 朝鮮半島冷戦構造の継続要因
  • 冷戦終結後におけるロシアと国際安全保障協力機構の協調と対立
  • シエラレオネ紛争に対する国際介入
  • 核抑止論
  • 民主主義
  • 外交・対外政策の歴史と機能
  • 日本の安全保障と自衛隊の国際貢献 
  • ウクライナ戦争の分析

スケジュールはあくまでも目安で年度で異なります。ゼミ生の提案等によって変更することもあります。

春学期開始:4月


3−4年生:新年度交流会3年生:各自研究テーマの選定と文献調査、文献発表と議論4年生:卒論テーマの確認と今後の作業スケジュールの確認

5−6月

3年生:7月の関西の他大学との合同ゼミに向けた準備(グループ発表に関する調査)or各自の研究文献発表
4年生:卒論に関する研究発表

7-9月

3年生:合同ゼミでの発表(7月頃)、海外FW?、ゼミ合宿?
4年生:卒論に関する研究発表、卒論構想準備

秋学期開始:9月

2-4年生:ゼミ交流会
2年生:自己分析、「虎の巻」配布
3年生:自己分析、ゼミ論関係のスケジュール確認
4年生:卒論関係のスケジュール確認

10-12月

2年生:国際関係のテキスト講読(発表とディスカッション)
3年生:ゼミ論の研究発表と議論、ゼミ論執筆作業
4年生:卒論中間発表会(11月頃)

1-3月

2年生:テキスト講読、沖縄研修に向けた事前準備、沖縄研修(3月)
3年生:ゼミ論執筆・提出(2月)、2年生と追いコン準備。
4年生:卒論提出、卒論発表会

姿

私がゼミ生を求める姿勢についてここでは簡単に紹介します。

まずは自分を見つめて欲しい

日本人は、外国人と比べると空気感を大切にします。他の人がどのように行動しているのかを察知し、それに合わせる技能は飛び抜けていると思います。しかし、これは時に皆さんを他者の中に埋没させたり、あるいは、他の人を模倣し、やり過ごそうという気持ちを生み出したりします。私のゼミでは、皆さんにまず自分自身と向き合ってもらい、現在の自分の限界や弱点なども直視して、なりたい自分になるための努力を惜しまないでほしいと思っています。 

自分に正直に。だから自分には妥協しないで欲しい

他の人と比較して優れたり、劣っていたりする面は、みな必ずあります。でも、それは大した意味を持ちません。場所や環境が変われば一緒にいる人は変化しますし、人からの評価も変化するかもしれないからです。でも、自分だけは、一生取り換えることはできません。他の人には馬鹿にされるようなことでも、あなたが強く引きつけられどうしても知りたいことであれば、それに従えばいいのです。それと同時に、自分と向き合う勇気、自分を変えようと挑戦する気持ち、こういったものも大切にしてほしいと思います。自分自身を顧み、自分は万全を尽くしているのか、そう問いかける姿勢を常に持っていれば、様々な可能性が花開いていくと私は信じています。 

富樫ゼミに興味を持っている学生の皆さんに教員からゼミの規模や求める学生象などいくつかお伝えしておきます。

少人数のゼミ生による精鋭部隊を目指す

少し「あまのじゃく」のようなことを言いますが、私は数多くの学生に来て欲しいとは思いません。その理由は大きく分けて二つあります。第一に、経験上、人数が多くなりすぎると、学生に寄り添い徹底した指導を行うという方針が実現困難になるからです。学生にも妥協はせず、私の求める水準を明確に示し、そこへたどり着けるよう指導します。その意味で、ゼミでは少数精鋭部隊の育成するような形にしたいというのが私の正直な気持ちです。したがって、誰かと常に一緒にいて、一人では行動できないようなOne of themの学生を求めません。ゼミに入ったけれども、教員とあまり話したことがないというような関係性はつまらないからです。

第二に、このゼミ、この先生じゃなければ嫌だと強く思う学生を受け入れたいからです。私が学生の頃、ゼミ選びは真剣に悩み、そして色々な授業をとり教員をこちらから(勝手に)「審査」していました。そして、この先生じゃなければ嫌だという熱意をもって、ゼミを選びました。学生の中で、この先生じゃなきゃ嫌だと真剣に考える人は残念ながら決して多くないように思いますが、教員も自分のところで学ぶことを切望している学生を教えることほど幸せなことはありません。従って、別に来たくもない学生と受け入れたいとも思わない教員の組み合わせは双方にとって不幸であり、教員のモチベーションも下げます。皆さん、ゼミ選びは真剣に考えてください。

「個性が光る変わり者」求む

私のゼミは、単なる「変わり者」ではなく、「個性が光る変わり者」を求めています。例えば、成績はあまりよくなくても、未知の領域や新しいことにリスクを恐れずに飛び込む気概のある学生や、他の人に率直な物言いをしてしまうところもあるけれども理路整然と思考し議論が得意な学生、あるいは、これなら誰にも負けないというところがある学生などを、ここでは一例としてあげてみましょう。

最初の学生は、このゼミで徹底的に論理的思考力を鍛えれば大きく成長しますし、その際に他の人にはない行動力がより一層大きな魅力になるはずです。2番目の学生は、ゼミの議論の中で自分の足りないところ、特に他者を納得させる方法やコミュニケーション能力などを身に付ければ、人間的な魅力も増すはずです。最後の学生については、例えば「勉強は苦手だけれども、自分は筋トレは誰にも負けない!」という学生が過去にいました。実は、筋トレは自己管理が最も重要なのですが、学問的な自己管理、つまり研究についての作法を教えたところ、彼は爆発的に成長しました。

このように言うと、「自分は個性がない」と思うかもしれません。ですが、実際にはそんなことはありません。皆、それなりに「変わり者」です。その自分のありのままを受け入れ、そしてゼミでは、あなたの個性を前面に出して欲しいと思っています。個性こそがその人の可能性であり、それをより一層伸ばしたり、あるいは欠点を補ったりして、そこに教員は学生の将来の成長の可能性を感じ取るのです。そして、世の中を変えてきたのは、「平均的な人間」ではなく、「個性のある人間」、いわば統計的に言えば「外れ値」、「変わり者」なのです。だから、皆さんも自分のこだわり、譲れないこと、大切にしてください。というか、まず見つけてください。私はその個性を引き出し、伸ばすお手伝いをします。